第一章 あやめの嫁入り

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 だから、わすれるまえに、ここにかくことにしたんだ。  わたしもね、ゆずきのことがすき。  やさしいやさしい、ゆずきがだいすきだよ。  おおきくなったら、ゆずきのおよめさんになりたいな。  だけど、もうじきこのきもちはきえちゃう。  いやだけど、しかたがないことなんだっておとうさんがいうの。  けどね、わたしすごいことおもいついたんだ。  わすれたらね、あいにいって、またすきになればいいの。  なんどわすれさせられても、なんどでもあいにいくの。  ゆずきのこと、なんどでもすきになれるとおもうから。  だから、いつかおおきくなったわたしがきたら、やさしくしてもらえるとうれしいな。  いまのわたしにしてくれたみたいに。  それじゃあ、またね。ゆずき。  だいすきだよ。   ――――あやめより。 「あ……れ?」  手紙に一滴の雫が落ちて、文字が滲んだ。落ちたのは、僕の涙だとすぐに気がついた。  なんだこれ……。くそっ、止まらない。  ポタリポタリと、涙はとめどなく溢れてきて、拭っても拭っても止めることができなかった。まるで自分の身体じゃないみたいで、なんだかとっても焦った。  そんな僕の顔を、あやめが心配そうに覗く。 「大丈夫……ゆずき?」 「……ごめん、もう平気」     
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