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外はまだ雪が降っていた。この様子だと朝まで降り続いて、雪かきの手間をかけさせられるだろう。
家を出たときの興奮は、もうどこかへ行ってしまっていた。積もる雪に吸い尽くされてしまったのかもしれない。おうちに帰ろう。
今日はクリスマス。良い子にはプレゼントが届く日だ。
クリスマスプレゼントの送り主を知ってから随分と年月が経ってしまったし、本当に欲しいと思うものは形を持たないものばかりだと分かっているが、それでも子供みたいにねだることが許されるのなら、欲しいものは数え切れないほどある。
例えば――私が、和牛(略)を待ちながら、あの兄妹の『この後』すなわちパンケーキを食べる様子を想像していたときに、読者諸賢が発揮したような豊かな妄想力。作家として生きていくにはどうしても欲しいものの一つだ。読者諸賢がどんな『この後』を想像したのかは追及しないでおこう。各々の胸にしまっておくといい。
外に出た兄妹は、腕を組んで、一本の長いマフラーを二人で首に巻いていた。兄妹というのはあんなにも仲の良いものだろうか。誰がどう見ても恋人同士に見えるだろう。
兄は妹に顔を寄せる。
「お前も、父さん母さんと一緒にハワイ行けばよかったのに」
「せっかく看病してあげたのに。病み上がりが、生意気に何言ってるのかなー」
彼女はにんまり笑った。そして、兄にもっと顔を近付けて、はにかみながらささやく。
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