ホ猥トクリスマス、肉欲に溺れる。

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 合同誌の売上でほくほくになった財布を抱え、ファミレスのドアを開ける。人数は一人、禁煙席希望と伝えると、窓際の席に案内された。ファミレスに来るのは珍しくなかったが、今日は特別だった。きっかけは先程見た一本のテレビCMである。  クリスマスをはさんだ一週間限定、和牛100%プレミアムハンバーグステーキ。  肉好きな私にとって、そのテレビCMは衝撃だった。画面の中の和牛100%(略)が私に呼びかけてきたのだ。 「私を、食べて」  湯気を上げ()()った身体を見せ付けながら、彼女は熱い息を吐いた。(これは重要な注記だが、以降も未成年が読める健全な作りになっているので安心されたし)  文化祭からもう一週間経っているのに、まだ頭がお祭り気分なのかと言われそうだが、誘いを()()にはできない。()(ぜん)食わぬは何とやらだ。なにより人間は肉への欲に逆らうことなどできないのだ。  今日はクリスマス。今日会わずしていつ会うのか。合同誌の売上金を引っ(つか)み財布に()(ぞう)()に突っ込むと、雪降るのも構わずに、彼女のもとへ夜道を一目散に駆け出したのだった。  売れるかどうか分からない、そもそも販売できるかどうかも分からない合同誌のため、やりたくもないアルバイトで身を削りながら懸命に筆を握り、大業を成し遂げた自分にご褒美を与えるために(念の為言い添えるが【筆を握る】に他意は無い)。
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