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隣の席には若い男女が座っていた。どちらも高校生くらいの年齢に見える。めかしこんではいるが、どことなく田舎の学生臭さを漂わせている。個人経営の小さなコンビニでファッション誌を立ち読みし、なんとか普段と違う自分に見せようと必死になった様が想像されて、可愛らしい。彼の方は、何を入れるつもりで買ったのか分からないほど収納力の無い小さなカバンを脇に置いている。詳しくないのでよく分からないが、そういう流行りなのだろうか。彼女の方は、この真冬の中にあって短いスカートだ。可愛さと露出の高さは比例すると聞いたことがある。
席に着いて二秒、店員呼び出しボタンを押すとパンポーンと間抜けな音が店内に響きわたり、程なくしてお冷の入ったコップと共に店員がやって来た。
さあ、彼女に会うための重要な手続きだ。私はひと文字も間違えないように、慎重に、そして厳かに、
「和牛100%プレミアムハンバーグステーキ、それとライスを」
と伝えた。店員は注文を繰り返してから去っていった。あとは彼女を待つだけだ。
隣の男女二人組も注文が決まったようだ。
彼はA4サイズ一枚でラミネートされたメニューを指差し「この、期間限定のハンバーグとライスで」と注文した。彼女は彼から受け取ったメニューを裏返してから、「これと、ホットコーヒーをお願いします」と注文した。
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