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今宵の主導権は彼女にあった。自分の体が求めるままに、男に先んじて快楽を貪るのだ。彼女の持つ大ジョッキサイズの容器からは蜂蜜がとめどなく溢れ出し、堂々とそそり立っているマウンテンなパンケーキの頂から麓までをねっとりと湿らせる。彼は息を荒くしながら、彼女がその山を口内に収めてくれるのを今か今かと待ちわびている。
ついに彼女は山頂を大口で咥え込む。全身の骨が蕩けるほどの快感が頭から指先まで貫いて、堪えきれず歓喜の声を上げている。
「ああ……柔らかい! そして暴力的に甘い! このパンケーキ全部ミキサーにかけてドロドロにして二十四時間三百六十五日ずっと点滴で摂取していたいほど美味しい!」
狂気に満ちた感想とその声が彼を刺激し、彼は小さなカバンから、布を突き上げてテントを張ったようになるほど窮屈にしまわれていた自撮り棒を取り出した。限界まで伸長して、彼女の姿を収めようと執拗に振り乱している。おそらく「彼女とパンケーキ(キラキラした絵文字)」とSNSにでも載せるのだろう。
彼女は顔に恍惚を浮かべながら、もう一口もう一口と、顎を忙しなく上下させて貪欲に味わう。外れてしまわないかと心配になるほど顎を大きく動かして咀嚼している。
彼も我慢できずに、目の前のふっくらと豊かに膨らんだパンケーキに手を伸ばした。フォークの背でぐっと押し込んで柔らかさを確かめたり、元の形に戻ろうとささやかに反発する弾力を楽しんだりしてから、山頂から丁寧に切り分けた一切れを口に含む。
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