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ホ猥トクリスマス、肉欲に溺れる。
『事実は小説より奇なり』とはよく言ったもので、臨時収入が入ったのは偶然だった。
大学で文学科に籍を置く高校来の友人が、文化祭で合同誌を出そうと話を持ちかけてきたのは六月だった。共に受験したが桜散り、アルバイトをしながらほそぼそと書き続けている私を気遣ってくれたらしい。
ありがたい申し出ではあったが、不安というか問題が一つあった。合同誌として人目にさらす上で重要な問題だ。彼が書くのは、主に高校生同士の恋愛をからりと爽やかに描く話だ。ドラマや映画になれば、甘い恋に飢えた女子高生がすぐにでも飛びつきそうな。それは問題無い。問題なのは、私の書くジャンルと彼の書くジャンルが合同誌上で並ぶのは、どう考えても極めて不自然である点だ。私の心配はそれだけではない。そもそも、私の作品を掲載し、販売してもよいのか。
結果から言えば、異色の組み合わせだったこの合同誌は飛ぶように売れた。学校から販売停止命令も出なかった。お祭りだからと、見て見ぬ振りをしてもらえたのかもしれない。教授らしきおっさん達もそそくさと手にとっていったことだし、これは実質お許しが出たと考えてもいいだろう。
ここまで言えば、勘のいい読者諸賢ならばお気付きになったかもしれない。
そう、私が書いているのは、官能小説だ。
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