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暗闇の中に、見渡す限りの無数の黄色い小さな光が点滅していた。
黄色い光の群れは、見上げているモグラのバベの周りを飛び回り、まるで星座の様に輝いていた。
「ふつくしい・・・!!」
モグラのバベは、周りの黄色い淡い光に囲まれた幻想的な光景にしばし見とれていた。
「土の中に、こんなに素晴らしい場所があったなんて・・・」
ここは土の中ではなかった。
ここは、真夜中の地面の外だった。
モグラはバベ、土の中の生活者なので、目は余り良くなかった。
土の中でも真夜中の外も同じように見えた。
じじ・・・
黄色い光の1つが、モグラのバベの鼻先にやって来た。
「なんだ・・・?」
「やあ。あんた誰?」
「え、えーと・・・おいらは『モグラ』だけど?」
「始めまして。僕たち、『ホタル』です。」
「ホタル・・・?」
モグラのバベは、『ホタル』という名の光の正体が虫だった事に驚いた。
「虫・・・って・・・ここは土の中・・・」
「違うよ?ここは、夜の森の中。近くに池があって気持ちがいいよぉ~!!」
モグラの鼻先のホタルは、尻の光を得意気に光らせて言った。
「森の中・・・?」
モグラのバベは、地上に這い出たのだとやっと気付いた。
そして、今真夜中の地上の美しい世界に居る事を。
「今ここで、『モグラ』という陽気な地下の住人に逢えてとても嬉しいよ。
とっても嬉しいから、もっと周りを光らせるね!!
さようなら!モグラさん。」
ホタルはそう言うと、ぶ~んとモグラのバベの鼻先から尻を光らせて飛び立ち、仲間のホタル達に混じってまるで、辺りをシャンデリアのようにきらびやかに照らし出した。
「知らなかった・・・地上の夜がこんなに素晴らしいとは・・・」
モグラのバベの円らな目には、うっすらと涙が毀れた。
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