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コールセンターでの派遣社員を決めた理由はただひとつ。田舎では考えられないくらい高い時給だ。大学の奨学金返済を抱えて、就職に失敗したぼくに選択権は少なかった。
それに電話応対なら対面接客よりもストレスは減る。そんな甘いことを考えていた。
「真堂、次はお前だぞ」
スラリとした長身に隙のない銀縁眼鏡の神崎SVが、いつもみたいなぶっきらぼうな口調でぼくを呼んだ。ちなみにSVっていうのは、スーパーバイザー。カスタマーセンターでは、一般的な役職名らしい。
駅と直結した真新しいビル。その九階にある研修室から、神崎SVについて、八階に降りた。厳重に、カードキーで執務室の青いドアが開くと、電話対応の声とキーボードを打つ音がさざ波みたいに通り過ぎていった。
オフィス3つ分の壁をぶち抜いた縦長のフロア。
繁忙期には百三十名くらい収容するからかなり広い。
無数にあるPCの前にいるのはほとんど女ばかり。女子校出身のぼくにはそこまで違和感はないけど、共学から来た人はどう思うんだろう。
「飛沢ここ、いいか」
神崎SVは、フロアの端までぼくを連れていった。五人ずつ向い合せで座っている島の、一番後ろにいたぼくより年上の男性に声をかけた。
今から行うのがSBS、サイドバイサイドだ。先輩の隣で勉強のためにコールを聞かせてもらうんだけど、その人をみてびっくりした。飛沢と呼ばれた人は、かなりの美形だった。ゆるくパーマをかけた黒髪に、俳優みたいに目鼻立ちのはっきりした顔、しかも目が緑だ。一瞬外人?と思ったけど、カラーコンタクトみたいだった。
ふつーの女子ならラッキーと思うかもしれない。でもぼくはふつーとは少し違うから。ぼくはいわゆるイケメンが苦手だ。なんかぎこちなくなってしまう。
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