一生の不覚

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 二人のグラスが空になるまでさほど時間はかからない。真由美は俺に目配せをしてから、ウェイターに指で合図をして、それぞれの追加を頼んだ。二人ともペースが早い。  真由美は三杯目からはジントニックに変えた。少し酔ったのだろう、目の周りがほんのり色づく。 「私入社してすぐ、このお店に連れてきていただいたのよ。課長は覚えていらっしゃる?」少し厚めの唇がピンクのルージュで光っている。 「ああ、覚えているよ。新入社員歓迎会だったよな」 「私はあれから何度か利用しているのよ。友達とたまに来るわ」 「ほぅ、今の若い人たちはリッチだね」  誰と来ているのか聞きたくて、続きを待った。 「でも、課長が総務課にいた時に皆を連れて行ってくれた居酒屋の方が楽しかったな。私は」 「そうか、そりゃ良かった。そう言ってくれると僕も嬉しいよ」  さっきのことが気にかかる。 「ここへ来る友達って男かい?」 「さぁー、どっちかしら?」  真由美は笑いを含んだ意地悪そうな目を向けた。女友達よ、という答えを待っていた俺はフェイントをくわされた感じだ。 「ところで、相談って何だね?」  俺は気持ちを見透かされないように、話題を変えた。無意識のうちに、コースターの上でグラスを、もてあそぶように揺らしている。  真由美は俺のグラスに目をやったが、すぐ視線をはずして、前を見た。     
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