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「私、歓迎会で初めてお会いした時から課長が気になっていたの」
無言で次の言葉を待つ。
「今日この店を選んだのも、飾りなく自分の感情を話せると思ったからなの」
俺は話を整理した。真由美は山本から、つき合ってくれと、告白されている。だが、真由美は俺のことが好きだ。つまり独身で将来有望な山本を振ってまで、俺とつき合いたい。そのことを俺に言いたいのだ。
俺はグラスの淵に沿わせて氷を回した。クリスタルの澄んだ音が小さく響く。
こんなに魅力的な女が俺に求愛をしている。
心臓の鼓動が速くなった。どうにか、陳腐な言葉を探し出した。
「山本君とつき合っていいかどうか、僕に答えをだして欲しいのだね」
ここは、山本君とは止めたまえ、と続けようとした。
だが真由美の口から出た言葉は、予想と違っていた。
「いえ、その答えはもう決めているの。結婚することを前提につき合うことにしたわ。でも、来月から、と期日を決めたの」
「来月?」
「何故来月からかわかる? 今月中に私の恋を整理したいからよ」
「……」
俺は真由美の真意を探っていた。
「私、決めたの。山本さんとつき合い始めたら、彼以外は考えないと……。でも、それまでの私の恋の想いは叶えておきたいの」
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