第エヌプラス一夜

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「数字アレルギーってさ、さすがに暗闇では出ないでしょ」  姉貴は特に強い感情も持っていないようであり、口調に確信を滲ませていたので、俺は白状することにした。 「ああ、そうだな。その通り。俺が食べてました」  両手を上に上げて軽く振る。 「なんでわかった」 「DNA鑑定。唾液使って」  聞き間違いだろうか。 「結構費用かかったんだからね?」  どうやら真実らしい。みたらし団子の串についた唾液でも利用したのだろうか。 「姉ちゃんって、実は馬鹿?」 「そうかも」  俺の方が馬鹿だけど、とは口に出さなかった。 「なんでこそこそしてたの? 食べたいなら食べたいって言えばよかったのに」  姉貴は目蓋を少し下げて、眠たげな視線を寄越してくる。冷たさの感じられない眼差しが、却って俺の胸を貫いた。  何の為にしていた。  黙りこくる俺に、姉貴は尋ねた。 「嫌がらせ?」  特段悲しそうでもないな。  嫌がらせなのか。そういえば俺は明確な目的は持ってなかった。姉貴に何をされた。姉貴は何もしていない。  何、も。  そうか。何もせずに、寝てしまうからだ。俺と言葉をほとんど交わさずに。  ――それが理由か?  姉貴が、俺と話してくれないから。  顔が表面から熱を帯びてきた。たまらず壁の方を見やる。  何だよ、何だよ。ただ、拗ねてただけじゃねえか。 「なんだー? 自分のやったことが恥ずかしくなったか」  図星である。  無造作に頭を撫でてくる手も振り払えない。  俺は恥じらいを隠す為に嘘を吐いた。 「姉ちゃんが、俺を、馬鹿にするから、腹が立ったんだよ」
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