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顔を見ると、姉貴は薄暗い中でぽかんとしていた。
「あたしがいつあんたを馬鹿にした?」
「子どものときから」
無論、昔からのことなので流石に悟っている。仕方がない、格が違いすぎるのだからと。
「ああ、子どものときはしてたかも」
「今もだろ」
意図せず刺々しくなる口調。に、困り顔をする姉貴。
「あのね、馬鹿にできると思う?」
「は。だって……」
「だって?」
「昔から俺より勉強ができて」
「うん」
「生活の規則が崩れると駄目だけど体力あるし、運動センスもあって」
「うん」
「絵も歌も字も上手くて……」
挙げていて虚しくなってきた。非の打ち所がないにも程がある。欠点はどこだ、欠点を出せ!
「あんたさ、あたしを神格化してない?」
してる、かもしれないので、こくりと頷く。
姉貴は俺の頭に手を置き、一気にまくし立てた。
「いいかい弟よ。あたしは人間だ。確かにある程度のことはできる。だけど、あたしより勉強、まあ勉強といっても色んな分野があるけど、その分野ごとにあたしよりできる人はいるし、運動も、芸術も、その他のことも、あたしよりできる人は山ほどいる。たとえあたしが何か一つのことで世界一になったとしても、全ての能力が世界一なわけじゃない。すべての能力があたしより劣ってる人なんてあたしはいないと思うの。その事実がある限り、あたしは他人を馬鹿にはできない」
姉貴が一人でこんな長く喋ってるところ、初めて見た。
「つまり、みんな違ってみんないいから馬鹿になんかできるかってことか?」
「そう。あーもー、いつもこんなに喋らないから上手く説明できなかったじゃん」
そう言って姉貴は自分の頭をがしがし掻いた。
「でも、俺が姉貴に勝ってることなんて」
今のを聞く限り説明力だけだ。
「なーに言ってんだか」
姉貴はさも当然のように言った。
「あんたには努力があるじゃん」
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