第一夜

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 暗闇手探り文字通り、暗中模索。なんつって。  た、し、か、ここら辺。 「ビンゴ!」  と、思わず声を出しそうになった。危ない危ない。少し声を出した程度では起きないだろうがな。  取っ手に手をかけドアを開けると、明かりと冷気が漏れた。眠けが襲ったが、好奇心が眠けをも殺した。  箱っのなっかみはなっんだっろなっ。  俺はほくそ笑んだ。杏仁豆腐だ。姉貴の大好物。  ご丁寧にプラスチックスプーンまでついている。これでは俺に食べてくださいと言っているようなものだ。  獲物を手に取りなめ回すように見る。ふふん、初日にしてはいい物がゲットできた。  突然、冷蔵庫のドアが閉まった。  反射的にベッドの方を見る。大丈夫だ。ロングスリーパーの眠りの深さを侮ってはいけない。今は俺の方がロングスリーパーだということは、この際どうでもいい。 「いただきまぁす」  姉貴の背に向かって嫌みったらしく言う。姉貴はピクリとも動かない。昔からだ。多分ここで俺が寸劇を始めたところで起きやしない。  精々起床後に、蹂躙されたあとの無惨な姿を見て涙を呑むがいい。  まあ、極限まで規則正しい生活を送っている健康体が、多少甘味の摂取を怠ったところで大したダメージはないだろうが。静かな寝息は疲れていない証拠である。  一口一口味わって食べる。甘いものを食べるのは久しぶりだ。量は多めだったはずなのに、あっという間になくなった。  ごちそうさん、と心で呟いてからカスをゴミ箱に投げ込む。  まだまだ一回目だ。俺が怪しまれることはない。なぜなら俺は、姉貴の部屋には絶対入れないと思われているからだ。
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