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 優奈は静かな夜道を歩いていた。  今日は満月だから、ことさら歩きやすい。  夜道を歩くのにもすっかり慣れた。  優奈のような小学生がこんな時間に出歩いていたらまず間違いなく補導されるだろうが、そもそも他に人がいない。時々大きなトラックが通るけれど、そういうときは隠れてしまえばいい。  夜の散歩にあてはない。だいたい一時間ほどそぞろ歩いてから家に戻る。  その頃には二人とも眠ってしまっているから。  夜の中に、優奈をおびやかすものはない。  いつものように、神社の前を通り過ぎようとしたとき、見なれないものがあって足を止めた。  暗闇の中に橙の灯り。  目をこらして見ると、それは屋台だった。  前に、友達と行ったお祭りのときに見た屋台と少し形が違う。  車輪が付いた、リヤカーみたいな屋台だ。  赤い提灯に赤い暖簾。暖簾には何も書かれていない。  ――何の屋台だろう?  物珍しさから、優奈はふらふらと屋台に近づいた。  お客さんはいないようだ。  すると暖簾の向こうから、誰かがひょいと顔を出した。優奈はギクリとして、胸の前で手を握りしめた。
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