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「……ラーメン屋さん?」
ポツリと呟くと、青年はにっこりした。
「ええ。今夜はラーメンをやっているんですよ」
――今夜?
どういうことだろうと、疑問を口にする前に、優奈のお腹がきゅるると鳴った。
「お腹がすいてるんですね」
と言われて、頬が熱くなった。確かに夜中というのもあって、少し空腹を感じていた。
「すぐできますから、待っててくださいね」
「えっ、あの、」
「今夜はお客さんがなかなか来なくって、寂しかったんですよ」
青年が上機嫌で言う。
どうしよう。
確かにお腹はすいているけれど、ひとつ問題があった。それでもそれを言い出すのははばかられて、思わず口をつぐんでしまう。
悩んでいるうちに、食欲をそそるにおいがしてきた。
「はい、お待たせしました。当店自慢の醤油ラーメンです」
目の前に静かにどんぶりが置かれた。
湯気がふわっと漂い、薄い色の澄んだスープがきらきらと輝いている。具は美しく盛り付けられていて……。
――おいしそう。
優奈は逡巡したが、そっと割り箸を手に取った。
麺を少しだけ啜る。
「……おいしい……」
青年は「ありがとうございます」と言って笑った。
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