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近づくと、丸い鏡に作業着姿の俺が映る。
鏡に自分が映るのは当たり前だが、どうも気になって仕方がない。
まるで鏡に取り込まれるような、そんな威圧感を感じる。
ただ、丸い鏡にはカバーはついていないし、ひっくり返す事も出来ないようだ。
仕方なく、俺はそばに置いてあった布を鏡にかぶせて作業を再開した。
これで妙な視線を感じる事はないだろう。
そう思っていたが、少ししてまた妙な視線を感じた。
振り返ると、黒いドレッサーの鏡にかぶせた布が床に落ち、鏡があらわになっていた。
風で落ちたのだろうか。
そう思いながら、床に落ちた布を拾おうとした時、俺の後ろを鏡越しに誰か通り過ぎたのが見えた。
振り返っても誰もおらず、一瞬見えたその人影は髪の長い女に見えた。
だが、ここで働く人間はみんな男だし、髪の長い奴もいない。
気のせいだと思いながらも、疲れのせいか気分が悪くなり、その日は仕事を切り上げて帰った。
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