黒いドレッサー

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翌日、依頼された家での不用品回収が終わり、会社の倉庫に回収品を運び込んでいると、野田が炊飯器を持ったまま黒いドレッサーをじっと見つめて立っていた。 「何してるだ?」 俺の声に野田はビクリと肩を震わせ、こちらを向いた。 「いや、何か、鏡の中から女の人がこっちを見てたような気がして」 困惑した様子で、野田は言った。 きっと、俺が見た女と同じだろう。 気味が悪いからと野田も鏡に布をかぶせたが、やはり少し目を離した隙に布は床に落ちていた。 「風で落ちるのかもな」 俺がそう言うと、野田は厚い布をわざわざ見つけだし鏡にかぶせたが、結果は同じだった。
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