黒いドレッサー

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「どう? 素敵かしら」 俺にそう問いかける野田の唇は、口紅を塗ったように真っ赤に染まっていた。 野田は化粧をする男ではないし、声も言葉使いもまるで別人だった。 俺が唖然としていると、野田は真っ赤な唇で微笑んだ。 その時、俺は気づいた。 野田の両手が真っ赤に染まり、右の太ももにはガラスの破片が突き刺さっている。 椅子でよく見えなかったが、野田の足元には血だまりが出来ていた。 だが、野田は平然と俺の方を見て、再び「どう? 素敵かしら」と問いかけて来た。 「そんなわけないだろ! 何やってるんだよ、お前」 俺は咄嗟に、そう叫んでしまった。
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