黒いドレッサー

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すると、野田は糸が切れたようにガクリと頭を垂らした。 「どうして素敵だと言ってくれないの……」 そう言って野田は顔を上げると、鏡を見ながらブツブツと何かを呟きはじめた。 微かに聞こえるのは「アカ」という言葉だった。 鏡に映っていたのは野田ではなく、明らかに髪の長い女の姿だった。 「アカガタリナイ!!」 そう叫びながら、髪の長い女は野田の太ももに刺さったガラスの破片を抜くと、何度も何度も同じ場所を刺した。 足元に広がる血だまりが、さらに大きくなっていく。 「やめろ!!」 俺は叫びながら野田を止めようとしたが、力負けしてしまいガラスの破片で腕を切られた。 傷みで顔が歪み、野田を掴んでいた手を離した。 すると、野田は動きを止め、手に持っていたガラスの破片を床に落とした。 ドクドクと太ももから流れ出る血を両手にベットリとつけると、不敵な笑みを浮かべた。 そして、両手に着いた血を顔に塗りたぐり、鏡を見ながら「素敵な赤」と微笑むと、そのまま気絶をして倒れた。
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