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「その本は、どんな本なんだ?表紙とか、題名とか…」
「表紙は、海。」
「海?」
「そう。本って言っても写真集なんだ。」
「なるほどな、納得したわ。」
「題名は『うみ』って書いてある。でも、見にくい。」
「じゃあ、とりあえず海の表紙を探せばいいと」
「うん。」
「了解。どこに置いたとかは?」
「いやー、それが、その本だけは仕舞うようにしてたからさ。」
ここ、ここ、と勉強机の1番上の引き出しを指差した。
「大事な物は、ここに仕舞うようにしてる。」
「へぇ…」
大事な物、か。
「だから、なくすわけないって思ったんだけどなぁ…」
「逆に、あれだけ散らかってて無くさない方が難しいんじゃ…」
ないのか…、と続けようとして、何かが引っかかった。
『あれだけ散らかってるのに。』
あれだけ散らかってるのに?
あれだけ散らかってるのに、ペットボトルの数が少なくなかったか?
多いって言っても、10本程度。
でも、部屋は床が見えないくらいだった。
あと気になるのは、山口が言った
『今度から水木と一緒に掃除するわ』
って言葉。
俺以外に掃除する人がいた?
その人が、ペットボトルだけでも掃除したんなら…。
「あら?綺麗になったのね~」
「母さん?!入ってこないでよ!ていうか、いたの?」
「今、帰ってきたのよ~。靴があったら、誰か来てるのかしらって思ったの。」
「は、はじめまして。お邪魔してます。水木です。」
「はじめまして~。今日は、水木君なのね~」
水木君なのね…?
「母さん、余計なこと言わないで!」
「ごめんごめん、じゃあ下にいるからね。」
そう言って、出て行ってしまった。
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