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「記憶?」
「そう。たぶん1番大事な記憶。でも、一向に思い出さない。どっかで落としたんだ。」
「そんなことあるか?」
「あるんだよ。」
「でも…」
「いいから、帰ろう。」
『帰るね!』
「でも、水木…」
「もういいって、哲也…、え?」
「哲也?誰?」
「哲也って、誰だ?」
誰、哲也、誰だ…
「水木?」
誰だろう。
たぶん、それが…
「水木!」
目の前が真っ暗になって、体の半分が痛かった。
目が覚めると、家のベッドだった。
「起きたか?貧血だって。」
「山口…」
「意外と軽いのな。」
あぁ、運んでくれたのか。
「悪い、助かった。」
「起き上がるなよ。もう帰るから。」
「送る」
「いいって。寝てろ。じゃあな。…なぁ、」
「ん?」
「思い出さないくていい記憶も、あるのかもな。」
玄関の方から、お邪魔しました、という声が聞こえた。
情けないな、俺。
思い出さなくていい、記憶。
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