俺という人物についての考察

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「おはようございまーす。」 「あ、来た。おはよう。入って入って。」 職員室の戸を開けると、スッとした涼しい空気でやっと息ができる。いつも思う。職員室は羨ましいなって。 「なんですか、このクソ暑い日に…。来るまでに溶けますよ、俺。」 「大丈夫。人は溶けないから。」 目の前に立つと、担任はデスクをガサガサしながら言った。 「あなたが、進路を真剣に考えないからでしょー?あったあった。」 高2になってから、進路関係の授業が増えた。 授業と言っても、LHRで話を聞くだけだけど。 俺の担任で、生徒から人気のある女の先生。去年も進路担当だったらしく、そういうことには敏感だ。 「聞いてる?」 「聞いてます。専門学校か短大か大学かですよね。」 「うん。奨学金とかは家庭によって違うけど、考えないと。」 「はい。」 進路のプリントを見て、丸やらマーカーやらをつけてくれる。 「ないー…」 「見つからない?」 「うん。もう、無理かも…」 「あれ、大事なものじゃん」 「うん…」 少し離れたところで、話し声が聞こえる。 何か、探し物か? 「だから、聞いてる?」 「聞いてますよ。」 「もー…」 「探し物ですか?」 「え?」 「いや、声が聞こえるから。」 「あぁ、うん。長野先生が結婚指輪無くしたらしくって。」 「結婚指輪?」
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