落し物No.1についての考察

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「じゃあ、お前が座ってた場所を教えてくれ。」 「座ってた場所?」 「じゃないと、探しようがないだろう。」 「そっか。」 ここだよ。と、窓際の7列あるうちの前から6列目。 「後ろには?」 「いなかったよ。」 「落とした記憶は?」 「ある。」 「どうして、そのとき拾わなかったんだ?」 「どうしてって、それは…。あれ?何でだっけ。」 シャーペンに限らず、落とせば拾うものだ。 それをしないのは、少し変だ。 「んー…思い出せない。何かあったんだよ。だから、私は拾えなくて…」 『拾えなくて』 つまり、拾う意思はあったということだ。 それを阻止される何かがあった。 できない状況になった。 「じゃあ、お前らは何か書き物をしていたのか?」 「どうして?」 「シャーペンを使う状況だったんだろ?何を書いてたんだ?」 「それは覚えてる。次の試合のために、作戦会議してたんだよ。うちの部活は、全員がノートに書くルールなの。」 面倒なルールだな。 そんなことをすれば、落書きをする生徒もいるだろうに。 「そのノートは今持ってるのか?」 「うん。持ってるよー。」 そう言って、鞄から出した。 「…おい、落書き多いな…」 「いいじゃん!落書きくらい!」 ところどころに動物の落書きがされていて、真面目な作戦会議の内容も柔らかな印象になっている。 「ん…?」 今日の日付が書いているページを開くと、綺麗な字が並んでいるだけだ。 ここまでは、毎ページ1つは落書きがされていたのに…。 なぜだ…?
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