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小さな映画館みたいな広さだったが、逆にステージと客の距離感が近いのでファンには嬉しい環境だろう。
席は決まっているが、トップのガーニョがいるので勿論一番前の席だけど、花道もあるので後ろだからといって見えない訳でもない。
お茶会のメンバー以外に追っかけやファンもいるようだが、中に入れるのは招待客のみらしい。
瑠里は食べ物でも買いたい様子だったが、ここは飲食禁止なので全く知らない一座でも芝居を観るしかない。
幕が上がる数分前に大きな紙袋を持ったエピナルさんが帰ってきたので、かなり買い込んだらしい。
蝶をはじめ色んな世代の女心を鷲掴みにするイケメンとやらにお目にかかってやろうと、辺りが暗くなると正面を向いた。
開幕と同時に声援が飛んだが、イケメンなんだろうけど白塗りが濃すぎて、メイクで誤魔化せそうな予感もする。
内容は時代劇で忍びの登場シーンもあり、瑠里は前のめりで意外と楽しそうだし全員男性とは思えない位綺麗な女性も登場したので、頭の中では八雲さんが浮かんできた。
普段見ている時代劇に似ている部分もあり面白かったし、大歓声の中幕は閉じられたが、大衆演劇の本番はこれからだったようだ。
再度幕が上がると役者さん達がこちらに向かって手を振りながら、客席を一周し首から花飾りを掛けて貰ったり、帯に封筒を挟んでる人もいる。
「あれ絶対金目の物だよね?」
瑠里と顔を見合わせガーニョに聞いてみたが、首飾りはレイといって値段によって花の色が変わるが、ファンは役者さんに直接掛ける事が出来るので至福のひと時を味わえる。
そして封筒は『おひねり』で帯に挟む事が出来るが、人気役者はおひねりだけでもかなり稼ぐらしい。
「イケメンって金になるんですね……」
「まぁ忍者探偵Xだったら、レイとおひねり持って技のポイントを聞きに行くかもしれないけど」
「――いや、原作漫画だから」
段々とこちらに近づいて来ると、エピナルさんが買っておいてくれたレイとおひねりを渡してくれた。
「二人も挑戦してみたら?いい経験になるし」
「えっ、すいません、有難うございます」
機転の利くエピナルさんは全員分のレイ等を買ってくれ、瑠里は花飾りを持ち私は封筒を手にしたが、何となく勿体ない気持ちでもここは便乗しておくしかない。
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