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三回目のおかわりを取りに行く時に部屋の中がザワツキだし人が集まっていたが、逆にトレーに乗せやすいので、今のうちに二個追加して席に戻る。
「さすが茜じゃ、隙を見計らい大漁じゃ!」
カットステーキやロブスターのオーロラソースがけ等、ボリューム満点の具材を乗せた忍者……いや瑠里は満足そうに先輩風を吹かせている。
「イケメン役者が来たから女性達は夢中だね、座長とナンバーワンとその他二名……」
忍者探偵オタクの二人は特に興味はないのか、食事を楽しみながらキャラクターの声優さんが変わった事について熱く語りだしている。
「やっぱねグレーは前の人が良かった、次の人も似せてイメージを崩さないよう頑張ってるよ?でも聞きなれたあの声が忘れられないよ」
「本当いい声優さんなのに勿体ないよね、そういう人ほど亡くなったりするんだよ」
『――何歳だ!』
忍者探偵Xの原作は漫画でアニメや映画、実写版まであるのは瑠里の部屋を見て何となく分かる。
ちびっこから大人まで幅広いファン層らしいが、ストーリーを知らないので話に全くついていけない。
「姉さん興味なさそうな顔で話に付き合うよりもさ、見てくればぁ……他の女子に混ざりポッと頬を染めて麗しのナンバーワンを」
「因みに名はイゼールよん、座長はヴァンゼル」
面白そうにかわらう忍者馬鹿二人に、微妙に動揺しながら反論を考える。
「貧乏で芝居とか初めてだし、ああいうリップサービスに慣れてないんです!」
「ちょっと気をつけてよぉ、世の中にはイケメンで悪い男は一杯いるんだからぁ」
「でも姉さんはたまには羽根を伸ばしてさ、般若から女子に変身してミーハー体験もいいかもよ?現実は貧乏暇なしで追っかけなんて無理だ……」
ギロリと睨むと慌ててステーキを口にした瑠里だが、確かにこんな機会はないし、さっきの人がもし素顔ならちょっと見てみたい気もする。
人が多いから遠くからでもいいし、芸能人と言ってもこちらの世界では誰も知らないが、スターといえば犬の世界のハッピーという演歌歌手にしか会っていない。
「じゃあ……ちょっと遠くから覗いてこようかな」
「そうして、般若が本気出すと怪我人でるから、それに今は邪魔者達もいないからね」
余計な言葉を挟んでくる妹だが、邪魔者は誰の事を差してるんだと考えながら席を立ち、小さな人だかりのある場所に移動した。
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