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「初めましてイゼールです、先程はどうも」
「はじ……めましてさっきはすみませんでした、慣れてなくて……月影百合と申します」
この声に間違いないし、一言話しかけられただけで顔の温度が上がるので、きっとコレが有名人と話せたという感覚なんだろう。
緊張するし上手く言葉が出ないし、夢なのかと思う位ドキドキして、初めて芝居を観たのにサインを貰いたくなる衝動に駆られる。
みんな素顔の方が断然イケメンだし、特にこの人は『一声かけたら女性は全員キュンとくる』パワーを感じるので、年齢層が幅広いのも頷け声の渋さも魅力に拍車をかけている。
「可愛い女性に観に来て貰えただけで嬉しいから、又来てね」
挨拶代わりにサラリと褒めてくれる役者さんなんて反則だし、結婚詐欺師になったら大儲けできそうだ。
どの角度から見ても完璧でいい香りもするし、ワザと距離を縮め隣に立つサービス精神にドキリとするし追っかけがいるのも分かる。
会話が苦手なタイプでもタイミングを見計らうように話かけてくれるし、居心地を悪く感じさせない配慮は、イケメンホストクラブ養成所のオーナー……いや、座長の教育なのかこの人の素質なのかは不明だ。
「そんなに緊張しないで、百合はとても瞳が綺麗で魅力的だからこちらまで移りそう」
「えっ、いや、スターが近くにいたら誰でも緊張しますよ」
「スターだなんて有難う、お礼に食事にでも誘いたいけど滞在期間はいつまで?」
言葉のお礼だけで食事とは……なんてリッチな人だと思えるが、今日で仕事も終わり帰ってしまうので 夢物語になりそうだ。
「えっ、そうなんだ……残念だな、一座は明日から三日間この近くを回るから良かったら観に来て」
封筒に入ったチケットを渡されたが枚数は一枚で、だけど金色なのでもしかしたら特別な物かもしれない。
「コレだと場所が変わってもいつでも来れるし、渡せる人数決まってるから、百合の分だけになるんだけど」
「はっ、はい、でもそんな特別なもの頂いていいんですか?」
「こちらこそ褒めて貰って嬉しかったし、それだけじゃ申し訳ないから食事もね」
小さなカードを渡されると三日の間はここに泊まるから、連絡してくれたらご馳走するねと微笑まれた。
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