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直通で繋がるようなので他の人に聞かれて後をつけられう事もないし、部屋の盗聴器は確認しておくからと有名人は苦労も多いらしい。
「有難うございます……タイミングが合えば観に行きます」
仕事柄ヘルプ要請が入るかもしれないし、安易に絶対と言えないのでそう答えたが、去って行く背中を見ながら心臓はバクバクし頬を抓った。
「痛い……」
トナカイの世界の文化は分からないが、あんな有名人がこんな貧乏人を食事に誘うなんて普通ならあり得ない。
なので『スターと言われたら食事をおごる』とか特別な習慣でもあるのかもしれない。
その後座長や他のイケメンとも挨拶を交わし瑠里の元へ帰ったが、心ここにあらずといった感じでボーッとしていた。
「百合、もしかしてデートにでも誘われたの?」
「えっ、いや、そんな事はないですけど……芝居のチケットは貰いました」
封筒を出すとシノンさんが『これプレミアチケットだよ』と教えてくれたが、色といいどこでも観れると言っていたので確かに特別感満載だ。
「三日間は近くを回るから都合が合えば観に来てって……」
「じゃあもし来る事があったら連絡して?泊まる場所用意するし、食事もって……それも誘われてたりして」
ガーニョがジッと見てくるのでドキッとしたが、瞳の奥がなんだか悲しそうに映ったのは、何故か疑問が浮かんだ。
「なんと、忍者探偵Xから食事の誘いがあったら私なら……」
「忍者じゃねーよ!自分の世界観でシュミレーションすんの止めて」
それからは和やかな雰囲気で話をし、お茶会のお礼を言いホテルで荷物をリュックに詰めていたが、何となく胸騒ぎがしていた。
引っかかっているのはガーニョが『食事の誘いがあった』と聞いた時の表情だが、羨ましいとかジェラシー的な感じじゃなく、哀しそうに見えた。
次に芝居が終わってから部屋を出て行ったエピナルさんが最後まで帰って来なかったのも不思議で、仕事等で見送りが出来ないなら機転の利く彼女は、あの場でそう言ってから離れた気がする。
会ってまだ少しの時間しか経ってないが、彼女たちは人生経験も豊富で色々見透かせる能力もあるし、小悪魔な部分もあるがとても素敵な人達だ。
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