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涙を流しながら色んな事が頭に浮かんでくるが、暫く泣くと少し落ち着き夜まで時間があるので今何が出来るかを考えた。
「荷物の何処かに発信機あるし、目立たないホテルを探して荷物置き場探さなくちゃ……ん?待てよ」
木村さんはもしかしたら泊まるかもと思っているので、帰って来ないと心配されるのは明日の芝居が終わってからという事になる。
なら逆に現場付近に手がかりを残す方が余計な手間が省けるし、特に社長辺りは地の果てまで追ってくれそうだ。
「いや、ガーニョが依頼しないと動かないか」
私情を挟むような人らしさの欠片もない親族は別として、瑠里の事を考えると当分色々揉めそうだが出来ればイザリ屋から離れて欲しい。
「美味しい物でも食べよ」
話が纏まれば最後の晩餐として好きな物でお腹を満たし、美味しいコーヒーでも飲みながら思い出に浸るのもいい。
会計は会社のカードだし、少々使っても気に入らなければ給料から天引きしてくれればいいだけだ。
「まぁ金の面ではケチケチしないから社長のポケットマネーで解決するよ」
口では大きな事を言っても貧乏人なので、贅沢をしようとするとドキドキし、『木村さん、カードは好きに使っていいと言ってた』と三回唱えて自信をつけた。
適当に走って美味しそうな匂いがすると確認したが、パンとかスイーツとか軽食しか目に留まらず買い食いに変更した。
「高級レストランに入っても緊張するだけだし、食べ慣れない物でお腹壊してもね」
コンビニで買ったパンも美味しかったしベーカリーにランクも上げ、気になるパンを何点か購入し、あのホテルの周辺の木陰で待機する事にした。
「美味しい……」
バターのコクがありフワフワで、パン生地だけでも満足なレベルだが、いつもなら何個も食べれそうなのに半分もいかずに手が止まる。
「食べとかなきゃ、もう口に出来ないかもなんだよ……」
こんな時でも貧乏根性は消えないので、残りのパンも一口づつかじってからリュックにしまった。
「贅沢な食べ方だけど、もし生きてたら残りを頂こう」
発見時に荷物を確認して、パンの食べかけを見られるのは恥ずかしいが、さすがに捨てるのは勿体ない。
まだ夜まで時間があるしトイレも済ませておきたいので、逆にホテルに入ってロビーで寛いでいた方がいいのではと思い始めた。
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