レディ達の覚悟

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死んだ後に敵が荷物を開け、イザリ屋の何かがバレてもいけないと確認の意味もある。 そこは木村さんなので抜かりはなく、スプレー類を含め怪しいと思わせる物は何もない。 「どんだけ目ェ悪いねん……ってツッコまれるくらいかなマジックで大きく書いてあるし」 他の世界に来るなら飲み薬を数種類持っていても怪しまれないし、スプレーも容器が可愛くて女性の持ち物って感じだ。 短期留学の時に振ってる人を見た事もあるので、特に疑問は持たれない筈だ。 あとはあんぱんと食べかけのパンと着替えだけなので、スマホをどうしようか考えながらファスナーを閉めようとした。 「あ、ちょっと胃もたれというか……気分悪いというか腹痛もありそうだし、何か飲んどこうかな」 これから殺されに行くので気分がすぐれないのは仕方ないが、少しでも苦痛は抑えておきたいのでポーチの中を覗く。 何種類か薬があるが、今の具合の悪さは頭痛でもあり腹痛や胃痛でもあり、吐き気でもあるのでそれぞれを飲んでいたらキリがない。 「これにしよう……」 万能とマジックで書かれた薬を口に入れると、ペットボトルの水で流し込み扉を出てロビーに向かった。 すっかりと辺りは暗くなり椅子に座っていると、心臓がバクバクしていたが周りに怪しい者も居ないのでこのまま待つしかない。 深呼吸をして目を閉じた時に、頭に例の『ズキン』とした痛みが走ったので、お迎えが来たと覚悟を決めそっと瞼を開けた。 『誰にも気づかれず最上階直通エレベーターに乗れ、一番奥だ』 周囲を見渡しても気になる者は居ないし、こちらも悟られないよう気配を消して動いてるので大丈夫な筈だ。 ゆっくりと立ち上がり言われたエレベーターに乗り込み、ボタンを押した所で死刑台に上るような気持ちでパネルを見ていた。 ポーンと音がすると最上階に着いたらしく静かにドアが開き、一歩外に出ると扉はしまったが目の前の大きなドアがスッと開いた。 お化けがいると分かっている場所なんて絶対に入りたくないが、もう後戻りは出来ないので一歩中に入った。 足を踏み入れた時点でホテル部屋の中というより、教会みたいに大きなステンドグラスのある場所で蝋燭(ろうそく)だけ灯されている静かなエリアに変わる。
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