レディ達の覚悟

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「本当はもっと若いのがいいんだけど、蝶人間はトップに近しい方が羽根の模様が好みなんだ。さすがに頭に手を出すと足がつくし、面倒だと思ってたら丁度このオバサンが気づいたみたいで」 「人生の大先輩になんて口に聞き方だろうね、多分アンタの五倍位生きてんじゃない?それに何事もエスカレートするとロクな事ないよ、身近で反面教師見て来たけど」 「そういえば百合は初めて来たみたいだし、せっかくだから蝶の解体を見るか、先にコレクションになるかどちらが……って何をしてる?」 エピナルさんにちぎったあんぱんを食べさせて、飲み物を口に入れると表情がマシになったので、恐らく何も口にしてなかったと思われる。 解体しようとしてる時点で飲み食いさせるとも思えないが、自分も最後の晩餐としてお腹を満たしたし、少しでも体力回復をしておくとイザ動くとなった時に都合もいい。 イザリ屋専用のパンは、体力回復等の特殊仕様なので任務の時には欠かせないし、初めの問診の時に好物を聞かれ希望のパンなのも嬉しい心遣いだ。 「せめて食事くらいさせてあげてよ、大衆演劇では紳士でも裏の顔は最悪だね、レディの扱いなってない」 「これは申し訳ない、いつもはこんなに時間が空けずにすぐに作業に入るから……で、どちらが先がいい?」 「私の希望は楽に始末して貰いたい、もがき苦しむのは嫌だし、今まで貧乏で相当苦しんだから最後は安眠がいい。それにグロいシーンを見せられるのもご免だわ」 何か……微かでもいいから、エピナルさんを逃がして時間を稼げる方法はないかと、さり気なく周りを見てもヒントすら掴めない。 「先に言っておくけどここは俺の場所だから、どんなチカラで抵抗しても絶対に勝てない。君には術をかけてるから即殺す事も可能だよ」 『本当に、何の役にも立てない』 今までの経験も役に立たず、自分より年配の女性も救えず無抵抗で殺され、余計な事をすると即死だなんて……絶望ってこういうのを言うんだと頬に涙が流れ落ちた。 「百合、巻き込んでご免ね……本当にご免」 「エピナルさん、私こそ……何の役にも立てずに……っくううっ…」 怖さと哀しさと歯がゆさと悔しさ、色んな感情が混ざって涙が止まらない。 だがいつまでもそのまま見守ってくれる筈もなく、遮るようにお声がかかった。
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