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魅惑的差し入れ作戦
「う…腕が上がらん」
「猛暑に草刈り機を数時間持ったらそりゃキツイよ、ハードさだけだと仕事以上かも」
イザリ屋での仕事は危険が伴い夜勤の為、出勤日数は少ないが休みを母の田舎の草刈り等で潰され、過酷な修行でもしているようだ。
かといって仕事の日を増やしても寿命が縮むだけなので、涼しくなるまで耐えるしかない。
母の田舎は大好きだったおじいちゃん達が住んで居た場所。
祖父母のおかげで今の仕事につけたと言っても過言ではないので、多少バテ気味だったとしても、雑草でお墓の周りを荒らすと罰が当たりそうだ。
ただ暑さで作業が思うように進まず、立っているだけでも体力を消耗してしまい、草刈りに来る回数は自然と増える。
「やっぱさぁ、細腕の女子三人じゃなくて男手って必要だよねぇ」
「一人はババだけどね」
娘に便乗しサラッと女子の仲間入りする母だが、ツッコミを入れる妹は余力がまだ微かにありそうだ。
「アンタ達手伝ってくれる彼氏とか作りなさいよ!」
「私は金持ちの老人狙いだから無理!ねーさん冷凍バナナまだぁ?」
草刈り機を扱うのは妹達で、握力はあるが体力に自信がない私はサポート役に回っている。
飲み物運びや刈った草を集めているが、少し動いただけでも滝のように汗が流れた。
作業用の大きなつばの麦わら帽子を被っていても、日差しから守られてる感はまるでない。
「瑠里、食べつつ日陰で少し休んだ方が…」
「私にも早く頂戴!老人優先してね」
こういう時は年寄りアピールするドラム缶体型の母だが、口数が少なくなりつつある妹の方が疲れてそうだ。
この日も昼からは日差しが強すぎて、体調でも崩して仕事を休むと困るという母の言葉で作業は終了した。
若い者というか人の姿もあまり見ない田舎だが、比較的裕福な家だと、高そうな農機具で作業時間も短縮でき業者に頼むところもある。
でもお金のない我が家…といっても今は貯蓄額に笑みが出るが、そんな事は口が裂けても母には言えないので以前と変わらない生活をしている。
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