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夏休みはあっという間に過ぎていった。二学期が始まってから早二週間。ツクツク法師の鳴き声の向こう、グラウンドでは野球部やサッカー部、陸上部などなど、元気な掛け声やバッティングの音が聞こえていた。
吹奏楽部の奏でる音階が下手に聞こえるのは偶然ではない。今まで部を引っ張ってきた三年生が引退したのだから。それはどこの部も同じ。
そう、二年生の時代になったのだ!
放課後の強い陽射しが降り注ぎ、窓が眩しくその光を反射する。湿気が熱を帯びて空気を重くしている。
木管や金管楽器の音を遠くに聴きながら、宇岩田 護(ウガンダ マモル)は白い紙に向かい合っていた。彼の、長方形の四角いメガネのレンズが光を反射している。丁寧に擦った墨汁は硯の中で彼の真剣な顔をぼんやりと映していた。
真っ直ぐに立てた筆が、す、す、と迷うことなく動かされ、文字が現れる。
ーー部員募集
宮古都高校、書道部。部員は彼一人だった。
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