口移しで、チョコレート

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 透はぎこちなく水神の身体に手を滑らせた。まずは背中全体に、それから肩や腕へと移動する。 「……いつもお疲れさまです」  透が頬を赤らめながらそう言ったのは、水神の右手を擦っているときだった。丁寧に泡を付けた後、軽く揉みほぐしてくれている。  それが水神の仕事を労ってくれているものだということは、すぐに伝わった。 「……ありがと、透」 「……ずっと、誠司さんに何かしたいなぁと思ってたんですけど……結局いつも何もできなくて」 「何言ってるの。透からはいつも元気をもらってるよ」  水神がそう言って笑うと、透は不満げに口をすぼめて、水神を見つめた。 「……ほら、そうやって僕を甘やかすから」  透は、水神の胸の方を丁寧に洗い始めた。  くすぐったい感覚が、水神にじわじわと快感を与える。 「……僕、誠司さんに甘えるだけじゃなくて、ちゃんと与えられる存在になりたい」  水神を真っ直ぐ見つめながら、透はそう言った。  恥ずかしそうに顔を赤らめてはいるけれど、透にしては珍しい自己主張だった。  それも、とてつもなく可愛い――――。 「……じゃあ、透にお願いしようかな?」 「何をすればいいですか?」  水神の言葉に透の顔がパァァと明るくなる。 「気持ちよくしてもらいたいんだけど……できるかな?」 「僕にできることなら……!! 誠司さんには気持ちよくなってもらいたいです」  透の表情は、純粋で真剣そのものだ。  これから何をしてもらいたいと思っているか、わからないのだろうか。今こうして、裸同士で向き合っているというのに。  水神は思う。そこが透のいいところ、魅力なのだと。  真っ白な、可愛い透。その真っ白な心を、自分の色に染め上げてしまいたい。水神は今、心からそう思う。  今は、優しい紳士の仮面を捨てさせて欲しい。  結ばれようとするときだけは―――― 「……ねぇ、ここ、気持ちよくして」  水神は、既に膨張している自身のものを透に示した。 「あ……」  透は、そこで初めて事のなりゆきを理解した。いつもなら、恥ずかしさで顔を背けてしまうところだろう。  けれど、今日の透はいつになく大胆だった。  耳まで真っ赤になりながら、おずおずと水神のそれに触れた。
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