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「……はぁぁ……気持ちいいですね」
「そうだね」
透の表情は、先程の色気溢れるものから打って変わって、少年のような笑顔になっていた。
水神と透は、お互いの全てを求め合い、獣のように滅茶苦茶にまぐわった。
愛しくて堪らない気持ちが溢れて止まらなくなった。
全てを出しきった後、二人はお互いの身体を再び綺麗にし合い、やっとこうして露天風呂につかっているのである。
透は、目を細めながら遠くの景色を見つめていた。
「やっぱり眼鏡がないと景色が見えません……。緑色がたくさんあるなぁっていうのはわかるんですけど」
「すごく綺麗だよ。渓谷はいいね、爽やかで」
「……え? 誠司さん、眼鏡なくても見えるんですか?」
「うん。だって、あれ伊達だもん」
「ええっ?!」
透は勢いよく水神の方を向いた。
目は真ん丸になっているし、口は半開きになっている。水神は、思わず吹き出した。
「あははっ……!! びっくりした?」
「びっくりしましたよ!! 全然気付きませんでした!!」
「フレームなしでちゃんとレンズがあるからね。度は入ってないけど」
「何で伊達眼鏡を……?」
「……本当に馬鹿みたいな理由だから、笑われそうだな」
「笑わないですよ!!」
水神は、真剣にそう言った透の顔をまじまじと見つめた。
「……可愛い」
「へっ? 」
「そういう真剣な顔も、最高に可愛いよ。いいね、裸眼でこうして見られるのは」
「……もうっ……話を逸らさないでくださいよ 」
透は顔を赤らめながら膨れっ面をした。
それがまた可愛かったのだけれど、これ以上からかうのは可哀想なので、水神は「ごめん、ごめん」と謝りながら話を続けた。
「元々目は悪いんだよ、書くときの姿勢が悪いからね」
「……ああ、確かに……集中してるときは机にかなり近付いてガリガリやってますよね」
「それで眼鏡を掛けるようになったんだけど、何かと不便だし、何年か前にレーシックをやったんだ」
「へぇ……」
「だけど、長年のくせって抜けないんだね。見えるのに眼鏡を掛けちゃったりして。慣れさせようと思ったんだけど、書きながら眼鏡を上げようとしたりする癖がどうしても抜けなくて……」
「なるほど」
「……結局、眼鏡がないとしっくりこなくて、こうやって伊達眼鏡をしてるの。見えるのに。そもそも眼鏡が不便だからレーシックしたのに」
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