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 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。  おれは目を覚ました。  何かおかしな夢を見た気がしたが、思い出せなかった。  目を覚ましてもやることがないおれは冷蔵庫に向かった。外で遊ばない代わりにいくらでもアイスを食べていいと、親と約束したことを思いだしたからだった。冷凍室を開けるとファミリーパックのアイスの箱があった。  しかし、その箱は空っぽで中には何も入っていなかった。 「おいおい。ウソだろ?」  おれは冷凍室の中をかき回した。でも結局、アイスは見つからなかった。 「ふざけんなよ! 何が『いくらでも食べていい』だ。アイスなんかひとつもねえじゃねえか!」  おれは冷凍室の扉を思いっきり閉めた。  まったく、食べたいときにアイスが食べられないなんて、最悪だぜ。  ピンポーン。  そのとき、家のチャイムが鳴った。 「誰だ?」  家にひとりでいるときは出るなと親に言われていたおれは、居留守を使おうとした。  しかし、玄関から聞こえてきた声に、おれは気が変わった。 「アイス屋でーす。暑くて外にも出られないそこのあなた、アイスはいかがですかー?」 「マジかよ!」  おれは小遣いを握りしめて玄関に走った。  ちょうど食べたいと思っていたときにくるなんて、なんてナイスなタイミングなんだ! 買えるだけ買ってアイス代はあとで親に請求してやろ。  おれはドアを開けた。そこには帽子を目深に被り、巨大なクーラーボックスを首から下げた男が立っていた。
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