霜月

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霜月

 手には赤い花束を  足を彩るは白の靴  川沿いの道をゆっくりと歩く  向かうは御山の背の君の(もと)  後何度、この道を歩くことが出来るだろうか。  後幾夜、背の君を想う夢を見るのだろうか。    白い山門を潜り、静かな竹林を歩む。  長い年月雨風に晒された墓石は苔生していた。  掘られた文字も判別出来ない程。  鮮やかな緑に蔽われた石の前に“赤い菊”の花束を。 「愛しています」  幾月、幾年経とうとも。  背の君、唯貴方だけを。
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