ひとりじゃない

1/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

ひとりじゃない

 短い人生だったけど僕は満足している。君と家族になれたから。  君は僕のベッドの横に座り、病院の布団に倒れるように顔を埋めて眠っている。いつもは綺麗にまとめた長い黒髪も、今は背中に広がり、首筋から垂れ、君の頬に掛かっている。そんな無防備な君の姿が僕の胸を締め付ける。僕の前で君が完璧じゃないことに有難う。完璧じゃないから許し合えるし支え合える。君に出会えて、僕はやっと一人じゃなくなった。  冬の朝の日差しが、病院の窓から君の背中に降り注ぎ、ピンク色のカーディガンの上に、光と影のコントラストを揺らめかせていた。  君こと、和倉(わくら)(旧姓・宮下(みやした)加奈子(かなこ)と、僕こと、和倉(わくら)幸人(ゆきと)の出会いは運命的だった。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!