向日葵 エピローグ

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向日葵 エピローグ

「詩織、なにしてるの?ああ、優しいねえ」 「おはようございますっ。近所のお花屋さんが季節はずれだからってオマケしてくれたんです。私、あの日、ここ通っちゃたんですよ。だって通行禁止解除されてたし、踏切また開かなかったし」 「だめだよ、ここ痴漢も出るんだから。それに変質者じゃなくてもこれからは恐いよね、殺人事件だもんね。・・・行くよ」 「はーい。あっ、とんぼだ!」 「山から下りてきたんだね、もうすぐ赤とんぼになるよ」 「えー?色変わるんですか、トンボ?」 水路の入口に置かれた花束のセロファンが、穏やかさを取り戻した朝の陽を浴びながら、夏の終わりの風にシャワシャワと音をたてていた。 黄色い花弁を揺らしながら。 〈fin〉
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