それはコイビトでなくヘンジンです。

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それはコイビトでなくヘンジンです。

とある会合で知り合ったアラフォーの年配男性とお付き合いすることになった。 この御仁がエキセントリックというかアナーキーというか、まぁすごい。顔はどこにでもありそうな半熟陰キャなんだけど、細マッチョな割に生きざまがワイルドすぎる。 例えば「ヘビの捌き方を知っている」とか「スッポンの生き血をテイスティング」できるとか、チャック・ノリスも真っ青なサバイバルスキルを持ってらっしゃる。なのに職業は理髪師。 しかも、今年になって三人の店長を言い負かして泣かして首になったという。(つまり、三回転職している) ギャップ萌えというのかしらん、とにかくそういう博物誌的な生き方がわたしの琴線に触れたのだ。 それで、まぁ、関係が発展しつつあるのだけど、同居人(女性)にばれたらやばい。 どうにか関係を恋人未満友人並みに軟着陸できないのかと、とある人に相談することにした。 彼女は「生まれてから一度も就職したことがない」という自称「深窓の令嬢」 本当に実家が裕福であるらしく、家事手伝いのまま婚期を逃しそうである。 とまれ「自分は文学少女だから尊重されて然るべきだ」と主張する時点で地雷物件であることは間違いなく、取捨選択の摂理は健全に機能しているようである。 なんでこんな人を好きになっちゃったんだろうかというと、文学少女というだけあって古今東西の恋愛小説を読破した猛者だそう。 そりゃ、引きこもって日がな読書に明け暮れてりゃ、そうなるわ。 という次第で件の細マッチョ氏と今後はどう付き合うべきか恋愛小説の達人に相談してみた。 すると、彼女。意外な結論を下した。 「ああ、あなた。それは恋愛感情ではなくて、変り者同士が呼応しあっているだけです」 へ。変人同士の同族意識とな? 恋愛関係じゃないと?! う~ん。さすが文学少女(?)は思考回路も価値観も一味違う。 そして、帰宅するなり同居女性に怒られた。 「あなたねえ!」 どうやら細マッチョ氏との関係がばれていたらしく洗いざらい問いただされた。 「いや、恋人じゃなくて友達以上変人以下の関係ですから」 正直に話すとヤブヘビになった。同居人はそうとうおかんむりである。 「あなた、またあの子のところに行ってたの?」 困った。この蛇は細マッチョ氏が見事にさばいてくれるだろうか。
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