真夜中のシンデレラ

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 そして、着々と己の地位を夜な夜な築き上げてきた晩、友達に教えてもらった早坂くんのSNSのアカウントをフォローした。  「学校この近くなんですね。私もそのファミレスよく利用してますよ(笑)」とコメント欄に爪痕を残して。  直ぐに反応はあった。 「マジで? 美春ちゃんなに校?」  ーー美春。それが私のSNS上で使っているハンドルネームだ。  本名は松永小春。流石に同名だと色々とボロが出そうだったので偽名を使っている。美しい春、だなんて今の私にピッタリだ。  内緒、とミステリアスな雰囲気を漂わせて返せば「だろうね。学校名教えたら美春ちゃんのファンが押し寄せてきて大変なことになりそう(笑)」と納得してくれたようで、それから他愛ない話をコメント欄で交わしていたら早坂くんから狙い通りの返しが寄越された。 「ラインやってたらID教えてよ」  それからはあれよあれよと言う間に進展し、良かったら実際に会えないかと向こうから誘いがきた。  早坂くんは休日の昼間デートを希望していたが、当然不細工な私のままでは彼の前に出れないので予定が詰まっていると適当に誤魔化し、夜遅くなら大丈夫と強引に自分の思い通りに事を運ばせる。  学校の外で会う早坂くんはやっぱり王子様みたいに格好よくて、初めて見る私服は文句なしに似合っていていつもと違って妖艶な大人っぽさを感じた。  それから数日後、夜遅くまで営業しているファミレスで、私はこんな質問を白々しく投げ掛けてみる。 「仁くんは彼女とかいないの?」 「いないよー。なんで?」 「えー、だって格好よくて女性の扱いも慣れてるから絶対モテるでしょ。こんなところで私と会ってる場合なのかなって」 「いやそれ俺の台詞だから。美春ちゃんこそモテるでしょ。一体俺は何番目の男なんだろうね」 「あはは、何番目って。私も今付き合ってる人いないよ。気になってる人はいるけど」 「……ふーん。じゃあさ、そいつの代わりでもいいから俺と付き合ってよ。気付いてると思うけど、好きなんだ」  ーーきた、と思った。  私はにこりと笑顔を浮かべる。 「ごめんね。それは出来ないんだ」  
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