第一話 夢へと繋ぐラピスラズリ

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        1  五月、ようやく大学生活にも慣れ始める頃。それまでは勝手がわからず、こなしていくのが精いっぱい。それがようやく落ち着き、大学生活を楽しむ余裕が出てきた頃である。  梨乃は今、食堂でお昼ごはんの真っ最中だった。初めのころは値段の安さに驚き、昼時の込み具合に青ざめたものだ。しかし今はそれにも慣れ、優雅なランチタイムを送れるようになっている。  そんな梨乃の向かいには女の子が座っていた。見た目は小学生かと思うほどの童顔だが、れっきとした大学生である。彼女の名は小野寺琴子。梨乃の大学での初めての友達である。可愛らしい見た目に反して、ズバズバものを言う毒舌娘。そういう性格も梨乃は結構気に入っている。 「次の授業まで時間あるね」 「そうだねぇ。まぁ、まったりしてようよ」  そう言ってすぐにだらけ始める琴子。基本彼女は面倒くさがり屋。隙あらばサボりたがるのである。そんな彼女に呆れつつ、梨乃は本を読もうとカバンを探る。そのときだった。 「あれ?梨乃ちゃん?」  声がした方を向くと、そこに一人の女子学生が立っていた。凛とした姿勢で立つ彼女の顔に見覚えがあった。 「もしかして、由紀先輩ですか?」 「うん、そう。久しぶりだね、梨乃ちゃん」 「お久しぶりです、先輩!」  感動の再会に盛り上がる二人を、琴子は不思議そうに見つめていた。それに気づいた梨乃はすかさず彼女を紹介する。 「高校の時の先輩、佐藤由紀さん。同じ文芸部だったの」 「へぇ~。初めまして、梨乃の友人の小野寺琴子です」 「琴子ちゃんね、よろしく。ここ座ってもいいかな? 話したいこともあるし」  由紀はそう言って梨乃のそばに腰を下ろした。久しぶりの再会で話に花が咲く。琴子はその間、話を聞いているふりをしつつ寝ていた。由紀とは初めての琴子、高校時代の思い出話など、話についていけないので仕方がない。  そうやって二人が盛り上がっている中、由紀が思いがけないことを口にした。
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