真夜中の死

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自分が見ている世界だけが動いていると感じたことはないだろうか? 今自分が居るこの世界だけが動いていて、自分がここから移動すれば、この場所も止まってしまう。 そして、今まで止まっていた別の場所が、何の変哲もないように動き出すんだ。 ボクはそういう風に世界を考えている。 ボクの視線が、世界を動かしているんだ。 少なくともそういう世界は、わざわざ視線に備えて動いてくれる世界感覚は、誰しもあると思うんだ。 特に真夜中。 あのすれ違ったおじいさんは、ボクの自転車のライトが当たったからわざわざ動いてくれる。 そしてボクが通り過ぎると、ひょいと闇にとけて、そのまま動かなくなるんだ。 夜中は自分の世界を感じやすいからね。 特にそんな、哲学的な気分になってしまう。 …これって、今のボクの『状況』にも、あてはまることじゃないのかなあ。 …ん?ああ、そうだね、そろそろ始めようか… ※※※※※※※※※※ ブツン。 無機質な音と共に、私はそのテレビの電源を消した。 自分の視線が世界そのもの… 確かに「テレビ」というのは、特にそういう感覚に陥りやすい。 あの饒舌な番組ナレーターは、私が消した映像の先で、まだ動いているのだろうか? それとも… まあいい。 真夜中はひどく眠いものだ。 願わくは、私がこの目を閉じても、世界が動いていますように… おやすみ。
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