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 屋上に続く階段はいつもほの暗い。そこに座るとほっと息をついた。 「塾に入ってきた女子がタイプでさー」 「えっ、写真見せて。うわー、確かに可愛いな」  クラスメイトには仲いい奴もいるけど、たまに会話についていけない。  そういう話になったとき、何も言わなければ淡泊だとか不健康だとかしつこく詮索されて面倒くさいし、正直に興味がないと言えばうそをつくことになる。  だから、時々教室を抜け出す。暇つぶしのお供は映画雑誌。  高校受験が無事終わって、入学までの間、レンタルDVDで映画を観るようになって、次には映画鑑賞が趣味になった。特に映画館でひとりで観るのが好きだ。  映画館は大きい画面で楽しめるのはもちろん、途中自分の都合で止められない。上映がはじまれば、ただ流されることしかできない。それが自由に再生・停止ができる動画サイトやDVDなんかを観て育った俺には、新鮮で、なんだか人生の縮図みたいに感じられた。    といっても、ヒューマンドラマ的なものよりかは、SFをよく好んで観ている。恋愛ものも、もちろん観てみたけど、心の機敏を読み取るのが苦手なのか、理解できなかった。それに、どうしても自分のこととして考えることはできなかった。  なぜなら俺は、高校生になる今まで、特に人を好きになったことがない。恋とかなんだとか、よく分からない。
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