2人が本棚に入れています
本棚に追加
娘の好きな彼
最近、娘には気になる人ができたらしい。
言わなくてもわかっている。
どんなに遠くにいても見つけ出すし、全身を使って表現するからまるわかりだ。
「好きなの?」
と聞くと、とても可愛らしい笑顔で「うん」と頷いた。
好き、という概念をママやパパ以外に持つことに寂しさを感じないと言ったら嘘だ。
まだ、2歳なのに。
自分より先に彼に抱きつかれると、少し悔しい気持ちになる。
かと言って、彼は自慢気にする訳でもなし、いつもニコニコ笑っている。
私が勝手に嫉妬しているだけで、助けられているのも事実だ。
彼は娘をあやすのがうまい。自分ではそうとは思っていないかもしれないけれど、彼といる時の娘のはしゃぎっぷりと言ったらないのだ。
どんなに一緒にいても飽きないらしい。
愛情表現が過激なところのある娘は、興奮するとバシバシ叩いてしまったりするので、迷惑をかけているかもしれないが、少しも嫌な顔をしない。
とは言え、困っていることもある。
娘の友達も彼を好きなので、取り合いになるのだ。そんな時もニコニコしているだけなのだから、こちらとしてもいい加減にしてくれ、と言いたくなる。
彼が誰のものにもならないことは私にはわかるけれど、それを娘に理解させるのは難しい。
誰もが通る道だと聞いた。
わかっている。
けれど、やはり考えてしまう。その魔法じみた引力はどこから出ているのかと。
うちの娘をこんなにも虜にしてしまう、彼の魅力は一体どこにあるのだろう、と。
お世辞にもスリムとは言えない。
けれど、とても愛嬌のある顔をしている。
髪の毛がないことを娘がどう思っているかはわからない。
顔のフォルムのおかげで気にならないのは確かだ。
服は若干ハデだけれど、目立つから見つけやすい。
何より、誰にでも優しい。
彼の優しさを娘がどこまで知っているかは疑問だけれど。
私は彼の親切をなんどもこの目で見た。
今日も娘は彼を見つけて、大きな声で呼ぶ。
「ぱんまん!」
あんぱんを買って帰ろう、と心に決めると、お腹がぐうと鳴った。
私も彼のことは嫌いじゃない。
最初のコメントを投稿しよう!