真夜中の共演

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   自転車を降りるとスマホで位置を確認する。もう少しで見えてくるはず。ここに来るまで3時間。漕ぎっぱなしで空には満月が輝いている。ちょうどいい頃合。  そして青空公園に着いた。  「あれっ」  公園には着いたが奥行きがかなりある。イメージよりも広く、この規模だと運動公園だ。中央噴水とやらはかなり奥だろうか。  公園にも外灯があるとはいえ、暗いのでとても長居はしたくない。隣のテニスコートで酔っ払った大学生達が騒いでいることが人の存在を感じられる唯一の救いだろうか。  とにかく早く済ませてしまおうと奥に向かって歩き出した。そういえば叫ぶ名前とは苗字で言えばいいのか、下の名前のほうがいいのか両方だろうか。  考えながらちょうど公園の入り口に差し掛かったときである。  「んっ?」  横手に鳥居が見えた。高さは自分の背より少し高いぐらいだが。外灯に照らされて赤い鳥居があったのだ。昼間の鳥居の話が頭によぎる。心臓がバクバク言っている。  「赤い鳥居は関係ないよね。普通だし」  冷や汗を拭って、気を落ち着かせて先に行こうとしたときだった。一陣の突風が吹いた。ザザァと木々が鳴り響く。  閉じた目を開くと信じられない光景が見えた。  「えっ?」  眼前にムラサキの鳥居が現れたのだ。  「なんで?おかしいでしょ」  ムラサキの鳥居などあるわけない。さっきまで赤い鳥居だった。何かがおかしい。  よく見ると外灯に青いカラーフィルムが巻きついていた。さっきの風のせいか。赤と青を足してムラサキか?絵の具ならそうだけど。  「違う。そんなことはありえない。これは赤い鳥居。ムラサキじゃあない」  暗闇の中、ムラサキに映る鳥居に動悸が収まらない。もう帰りたくなった。引き返そうと振り返ったとき。  「いやっ」  前方に赤い服の少女が立っていた。後姿で顔は見えない。  
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