一学期

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「でけーな、お前」 一日のうちの必ずどこかで言ってくる、二宮君のこのセリフ。 今日は一時間目の終わりに少し離れた右隣から声を掛けられた。 そう七月の席替えは私のすぐ左隣ではなく、通路を挟んだ右隣が二宮の席になった。 二宮くんの横の席は美樹だ。 「あんたが小さいんでしょ」 無視するのも可哀想だから、今日も私は昨日と同じセリフを返す。 二宮くんの横で美樹がクスクスと笑う。 「何食ったらそんなにでかくなんの?」 綺麗な幅の広い二重まぶたに、スッと高い鼻、形のいい薄い唇から吐き出される耳障りのいい声。 失礼だけれどこれで背が高かったらモテモテなのではないかと思う。 二宮くんの背が高かったら私と毎日こんな風に軽口を叩き合う仲にもならなかったかも。 少し胸が苦しくなった。 ん?どうして私胸が苦しくなったの今。 「あっ日直だったの忘れてた」 そう言って美樹は自分の椅子を持つと素早く黒板の前へと運んでいく。 「いいってジャンプすれば届くよ、このくらい」 後について行った二宮くんが黒板消しを持って、ジャンプしながら慣れている手付きで、黒板の上の方のチョークまで消した。
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