第二章  北上編

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『カラッ、カラッ』『カラッ、カラッ、カラッ』 王都の北門から延びている石畳の街道を、メイデン隊長の率いる隊商は北上していますけれど。反対側から、王都方面に向かう荷馬車が近付いて来ましたが。荷馬車の御者台に座り手綱を捌いている人間の男性が、怪訝そうな表情を浮かべていますね。 『こんにちは。今日も良いお天気ですね』 同じ人間の男性である私が、笑顔で挨拶を行うと。反対側から近付いて来た荷馬車の御者の男性も、警戒を解いて頷いて。 『ああ、そうだな』 慈母神の聖印を首から下げている聖女カタリナも、私に合わせて笑みを浮かべて。 『慈母神の御加護がありますように』 『ありがとうございます。神官様』 『カラッ、カラッ、カラッ』『カラッ、カラッ、カラッ』 『レムリア王国は、人間の王国だからね♪』 荷馬車と擦れ違い遠ざかり声が聞こえない距離になってから、大陸中を放浪して来た小人族のホビーが笑いながら話したので。人間の男女である私と聖女カタリナの二人は、苦笑を浮かべながら頷いて。 『王都ならば、それ程気にする人も居ないのですけれどね。あの荷馬車を運転していたのは、王都の市場に野菜を納入しに向かう、王都近郊の農民だと思われますね』 私が遠ざかる荷馬車の方を振り返り、荷台に積まれている野菜を眺めながら話すと。隊商を指揮している、メイデン隊長も頷いて。 『王都等の大都市近郊の農民は、新鮮な野菜や果物や、卵や牛乳を都市の市場に納入して利益を挙げる事が出来ますから。同じ平民の農民でも、都市部近郊の農民と、地方で暮らす農民の間では。生活水準に大きな違いがある例が多いと思われます』 メイデン隊長の話に、聖女カタリナも同意の頷きを示して。 『都市部近郊の農民の方達でしたら、都市の市場で作物を売却し、現金収入を得る事が出来ます。そしてその現金で、必要な物資を購入する事も出来ますけれど。私の生まれ故郷のテルモス子爵領は、レムリア王国の地方部に位置しますから。復興に必要な物資も、善意の寄付金で購入をして、王都から運ぶ必要がありますから』 テルモス子爵領の北東に位置する、ソリュード伯爵領の領主である私は。聖女カタリナの話に真剣な表情で頷いて。 『ソリュード伯爵領は、以前は独立した小王国でしたけれどね。今後はレムリア王国の地方部と、連携を深めていきたいと考えていますね』
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