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『久しいな。ロデリック男爵』
『はっ、はいっ。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』
『掛けても良いかな?。我が旧主よ』
『はっ、はいっ。どっ、どうぞ御掛け下さい』
『トスッ』
ロデリック男爵の許可を得た私は、王都にあるロデリック男爵邸の長椅子に腰掛けると。男爵邸の窓から外を眺めて。
『良い眺めだな、ロデリック男爵。王城が間近に見える』
『はっ、はいっ。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』
私は視線を窓から、室内のロデリック男爵に戻すと。
『昨日王城の大広間で行われた、国王陛下から私がレムリア王国の伯爵位の爵位を授与される式典に、卿は参列をしていなかったようだが?』
私の冷ややかな視線と言葉に晒されて。ロデリック男爵は全身を小刻みに震わせながら、蒼白な顔からは冷や汗を流して。
『もっ、申し訳ありませんでした。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。きっ、昨日は体調が優れずに、式典に参列をする事が叶いませんでした』
私は長椅子に腰掛けたまま、立っているかつての主であるロデリック男爵を見上げて。
『信じよう、ロデリック男爵』
『ふぅうううーーっ。あっ、もっ、申し訳御座いません』
思わず安堵の溜め息を漏らしたロデリック男爵に対して、私は視線を動かさずに。
『式典に関する話は済んだが。本題はここからだロデリック男爵』
私の言葉に一度は安堵の表情を浮かべていたロデリック男爵は、再び表情を強張らせて。
『なっ、何で御座いましょうか?。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』
私はロデリック男爵を無視するかのように、再び視線を窓から王城の方に向けて。
『昨日は国王陛下から直々に、王城に泊まるようにと御言葉を賜り。今朝も王城にて、王太后陛下に御会いする栄誉を得たのだがな、ロデリック男爵。その際に王太后陛下から、伯爵位の家格に相応しい邸宅を王都に構えるようにと、御助言を頂けてな』
私の意を察したロデリック男爵は、表情を引き攣らせながらも無理矢理に笑みを浮かべて。
『こっ、このロデリック男爵邸は、男爵位に過ぎない私には、分不相応な場所に立地していると以前から考えておりました。国王陛下と、王太后陛下の御信任の厚い、クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下に御譲りしたく思います』
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