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『我が旧主でもある、ロデリック男爵』
『は、はいっ。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』
私はロデリック男爵邸を訪れてから、初めて笑みを浮かべると。
『座って落ち着いて話してはどうかな?。それに少し喉が渇いたかも知れぬな』
私の言葉にロデリック男爵は、向かい側の長椅子に一旦腰を落とそうとしましたが。慌てて立ち上がると。
『もっ、申し訳御座いませんでした。おっ、御茶も御出しせずに。おっ、おいっ。直ぐに御茶と、御茶菓子を用意せよ。一番高い物をだぞっ』
『はっ、はいっ。御主人様』
私は御茶の準備が済むまでの間。テーブルを挟んで向かい側の長椅子に腰掛けたロデリック男爵に対して微笑んで。
『卿の気遣いは嬉しく思っている、ロデリック男爵。景色が素晴らしいこのロデリック男爵邸に関しては、適性な価格で購入をさせてもらう。安値で買い叩いては、国王陛下から伯爵位の爵位を授与された私の名誉に関わるからな』
適性な価格を支払ってもらえると判り、ロデリック男爵の顔色が幾分か良くなって来ていますね。
『あ、ありがとうございます。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』
私は笑顔でロデリック男爵に対して頷くと、侍女が運んで来た紅茶を一口飲んでから。
『実はな、ロデリック男爵。本日卿の邸宅を訪れたのには、他にも理由があってな』
『なっ、何で御座いましょうか?。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』
私は再び緊張を露にしているロデリック男爵を安心させるように、笑みを浮かべて。
『何。領地を隣接する領主同士の話だ、ロデリック男爵。王都から私の領地である、ソリュード伯爵領に向けて北上をする際には、卿の領地であるロデリック男爵領に隣接する街道を通る事になるが。最近その街道沿いに、不逞の輩が根城を築いているとの噂を耳にしてな?』
領主同士の実務的な話題に移ったので、ロデリック男爵も落ち着いた表情で頭を下げると。
『はい。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。仰せの通りです。魔王軍との戦いの際に雇った傭兵の一部が、魔王軍との戦争終結後に徒党を組んで山賊団となり、街道を往来する隊商等を襲っているとの報告を、領地から受けております』
元傭兵の山賊団でしたか。
『成る程な、ロデリック男爵。そこで私の方から提案があるのだがな?』
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