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『ロデリック男爵閣下は、臆病者だけれど悪党では無いようね』
『ええ、マリアンヌ。元領民の私の経験からしても、ロデリック男爵は臆病で無能ですけれど。悪党ではありませんね』
『本人が聞いたら確実に表情を引き攣らせる評価だな。クリスとマリー』
王都の裏通りにある肉団子亭に戻った私は、ロデリック男爵邸での旧主の反応を皆に話しましたけれど。
『ハイデル商会長が疑っていたように、ロデリック男爵が自分の領地のロデリック男爵領で、山賊団に街道を往来する隊商等を襲わせて、上前をはねていた訳ではないんだ』
旅の仲間である、ドワーフの女性のアニーの確認に私は頷いて。
『ええ、間違い無いと思いますねアニー。ロデリック男爵は、捨て駒に使ったかつての領民である私に報復されるのではないかと、心底怯えてはいましたけれど。山賊団を使役しているようには見えませんでしたね』
私の説明に、経験豊富な熟練の冒険者だった親方も、見事な顎髭を撫でながら。
『ハイデル商会長の考え過ぎか。まあやり手の商売人は、用心深い方が成功をするからな』
親方の見解に、私達は頷くと。
『ロデリック男爵の了承は得ましたからね。ロデリック男爵領に隣接する街道に出没をする、元傭兵の山賊団に関しては。私達が好きに処分をして問題はありませんね』
私の説明に、ハイデル商会からの依頼を仲介した親方が頷いて。
『やはり貴族兼冒険者だと、こういう時に円滑に物事を進める事が出来るな』
ドワーフの男性である親方の考えに、ハーフエルフの女性であるマリアンヌも同意をして。
『今後もクリストファーが、貴族兼冒険者を続ける際の最大の強みになると思うわね』
マリアンヌの恋人である、ドワーフの女性のアニーも笑顔で頷いて。
『面倒な貴族社会のやり取りは、クリスとマリーの二人に任せるね。それでいつ出発をするの?』
『ガヤガヤ』『ワイワイ』
夕方になり、料理とお酒を求めて肉団子亭を訪れている来客の様子を確認してから。
『彼女来ていませんね?』
私の言葉に、マリアンヌとアニーと親方の三人も、店内を見渡して。
『確かに彼女にも、予定を聞いた方が良いわね』
マリアンヌの話に、アニーが頷いて。
『多分いつものお店だと思うから、これから三人で顔を出してみる?』
アニーの提案に私も頷いて。
『ええ、そうしましょうね』
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